飲食店は立地が全て?

立地さえよければ本当に儲かる?

これから、飲食店を開業しようと物件を探している方には、ぜひ読んでいただきたい内容です。

立地がよくて、家賃が安いところを探していませんか?

実際、そんな都合のいい物件はありません。立地がよければ、家賃もそれにともない高いのです。

立地がよければ、本当に儲かるのでしょうか?

儲かるというのは、売上から、家賃、仕入れ原価、人件費、広告費などを引いた「利益」がより多く残るという意味です。

売上 ー 固定費・変動費 = 利益

立地がよければ、家賃は高いですし、回転数をカバーするために人件費もそれ相応にかかってきます。

飲食店は本当に立地で100%決まってしまうのか? 路地裏立地に繁盛店はないのか?

立地、お客さんのタイプ、集客術の観点から「儲かるお店」を考えてみましょう。

立地がよくても売上は、坪家賃に比例する

坪家賃と坪売上との相関
坪家賃・坪売上相関図
参考:店舗そのままオークション調査資料より

立地が良いということは家賃が高い。よって坪家賃が高い場所は、立地が良い場所という前提を踏まえて、上の相関図をご覧ください。

この相関図は、横軸:坪家賃料にたいして、縦軸:坪当たりの売り上げがあるのかを調査した図です。

坪家賃10,000~15,000円のお店では、だいたい150,000円程度の坪売り上げになり、坪家賃15,000~20,000円のお店では、200,000円程度の坪売上となっています。

相関図からわかるように、売上は坪家賃に比例して上がることがわかります。言い方を変えると、坪家賃に対して約10倍の坪売り上げにしかならないといえます。

つまり、坪家賃15,000円のお店も坪家賃20,000円のお店も利益率から考えると変わりがないのです。

坪家賃15,000 ÷ 坪売上150,000 = 10%
坪家賃20,000 ÷ 坪売上200,000 = 10%

利益率に関しては、変動費も考慮しないといけないため、この限りではありませんが、坪家賃と坪売上から考えると、高い家賃を払ってまで一等地で営業する優位性は見当たりません。

立地がよければ、お客さんはたくさん来るかもしれませんが、その分「出ていくお金」も比例して多くなり、残るお金が少なくなるということを念頭におきましょう。

どんなお客さんを集客するかで立地は決める

開業準備をするときに欠かせないのが、ストアコンセプトです。どんなお店にしたいかは、すでに決まっていますか?

では、お店に来てもらいたい、お客さん像も、しっかり決まっていますか?

繁盛店になるためには、立地以上に集客戦略が重要です。

集客したいお客さん像、つまりターゲティングが重要です。

大きく分けて、2タイプのお客さんがいます。あなたは、どっちのお客さんを集客したいですか?

「通りすがり客」と「目的客」

お客さんのタイプには「通りすがり客」「目的客」の2タイプがあります。

業界用語的にいうと「衝動来店」「目的来店」と呼ばれています。

どちらのお客さんが良い悪いという話ではなく、おおよそ立地でどちらのお客さんが多いかが決まります。

駅前立地や大通り沿い1階路面店など、いわゆる一等地、立地が良いとされる場所には「通りすがり客」がほとんどです。

「通りすがり客」とは、通りすがりに見つけたお店に立ち寄るようなお客さんたちのことです。来店動機は「おなかが空いたとき、お店がそこにあったから」です。

それに対して「目的客」とは「このお店の、この料理が食べたい」といった、そのお店に行くための強い来店動機があるお客さんのことです。

ラーメン屋さんやパンケーキ屋さん、かき氷屋さんに並んでいるお客さんたちは、まさに「目的客」です。

2タイプの特徴を詳しくご説明します。

通りすがり客はリピート率が低い

通りすがり客は、来店動機が薄いためリピート率が低いのが特徴です。

良い立地に店舗をかまえているので、看板や、ビラ配りなどの方法でも新規客の集客ができます。

こういった「通りすがり客」がメインのお店は、特にお店に対する思い入れがないため、高評価や良い口コミが得られにくいのです。

「通りすがり客」は、ただ空腹を満たせればいいのです。

3回来店すればリピーター

お客さんが、同じお店に再来店する理由は「美味しいから」「雰囲気が好きだから」「店員さんがかわいいから」と想像がつきます。

では、もう一度同じお店に「来店しない」ダントツ1位の理由をご存じですか?

その理由はんとなく』です。

料理が美味しくないわけでもなく、店員さんが不愛想だからでもないのです。

お店の料理や接客、雰囲気に満足したにも関わらず「なんとなく」という理由でリピートしないのです。

特に「通りすがり客」には強い来店動機がないので、もう一度お店に行くという理由もないのです。

ただ、「行く理由」「行くキッカケ」がないだけなのです。逆をいえば行く理由」や「キッカケ」さえあれば、再来店するお客さんになりえるのです。

お客さん再来店率

飲食店に2回目の来店をするお客さんは、約40%しか残らないといわれています。

2回目の来店から3回目の来店するお客さんは、さらに10%減り、30%のお客さんが再来店します。

そして、3回目の来店以降は緩やかな減少はあるものの離脱率は少なくなり、4回目に来店する率と大して変わりがないのです。

つまりは、3回来店すれば、固定客になるということがわかります。

そこで、多くの飲食店では「3つ以上のメインメニュー」を用意してお客さんに再来店するキッカケを作っています。

ラーメン屋さんに「醤油ラーメン」「味噌ラーメン」「塩ラーメン」と3種類の味を用意しているのも「次回は別の味も食べてみよう!」という再来店のキッカケを作っているのです。

あるカレー屋さんには「うちのカレーのうまさは、3回食べるまでわかりません!」と書いた張り紙が貼られています。

おそらく、このお店も3回来店すれば、固定客になってくれることを知っているからなのでしょう。

目的客が口コミを拡げる

「目的客」のメリットは、グルメサイトへ高評価をつけてくれたり、良い口コミを拡げてくれることです。

来店動機が高いということは、すでにお店に対する期待が高いのです。

「ここまで来て食べたのだから、マズイわけがない」という心理がすでに働いているのです。そのため、高評価をつけてくれたり、良い口コミが拡げてくれやすいのです。

こういった「目的客」をメインにするお店は大通り沿いの好立地よりも、むしろ路地裏の方が向いています。

この「わざわざ来る」という行為が、味すらも美味しくする「隠し味」となるのです。

食べログ評価3.5以上のお店と3.2のお店の違い

都内でフランチャイズを拡げるラーメン店のお話ですが、このお店は出せば、食べログ評価3.5以上を評価が付くお店です。

しかし、1店舗だけ食べログ評価3.2のお店があるのです。出しているメニューに違いはないのですが、なぜでしょう?

3.2のお店と他のお店との違いは「駅前立地」と「路地裏立地」の違いにあったのです。

3.5以上の評価の付くお店は、全てが「路地裏立地」での出店店舗でした。そのため、客層は「目的客」が大半をしめており高評価がついていたのです。

一方「駅前路面店」に出展した食べログ評価3.2のお店は、決してお客さんが来ないわけではありません。むしろ、忙しいお店であるのに評価は上がりませんでした。

実は、このお店のお客さんのほとんどは、来店動機の薄い「通りすがり客」だったのです。

同じ味を提供しているお店なのにも関わらず、お客さんの来店動機が違うだけで評価に大きな違いが出るという参考になる例です。

「目的客」の獲得はWEB戦略が大事

「目的客」を集客方法は「通りすがり客」の集客方法のように看板やチラシといった方法では効果的がありません。

「目的客」の集客するには、ホームページやSNS、グルメサイトを活用したWEB集客がかかせません。

来店動機が高くなればなるほど、Googleなどの検索エンジンで「店名検索」することが多くなります。

そのためにも、お店のホームページをしっかりと作っておく必要があるのです。

流れを意識した集客計画

「目的客」集客流れ

WEBから「目的客」を集客するには、全体の流れを把握したうえで、一つひとつ順序立てて行いましょう。

ひとつの集客モデルをご紹介します。

影響力のある人を集客

まず、一番最初に行うのは、プロと呼ばれるお客さんたちを集客します。

このプロと呼ばれる人たちはどういう人かというと、食べログの中で多くのフォロワーを抱えていて、口コミの影響力があるインフルエンサーと呼ばれる人たちのことです。

お店の評価を、まめに口コミしてくれる人たちです。

こういったプロの人たちを集客するのに欠かせないのは、お店や料理のストーリー性です。

「~にこだわり尽くして、たどり着いた味です」だとか「○○年間かけて見つけた一番おいしい食べ方です」などなど、お店のこだわり、料理のこだわりをストーリーにして伝えることで、プロの人たちの興味を引くことができます。

このような、プロの人たちに認められれば、たちまち食べログ評価も上がり、良い口コミにつながります。

メディア露出を意識する

口コミが増えると、グルメブログを書いてくれるお客さんが出てきたり、そのサイトがシェアされてFacebookやTwitterでさらに情報拡散が起きることも、しばしば増えてきます。

ニュースサイトやグルメ雑誌からのオファーも増えるかもしれません。

おもしろいお店のコンセプトや、興味を引く料理は、ニュースサイトに取り上げられやすく、多くの人が興味をもつネタです。

メディアに掲載されることを意識してコンセプトやメニューを取り入れるのも戦略のひとつです。

最終的にはホームページからの集客

ソーシャルメディアやニュースサイト、多くのメディアに掲載されることが多くなると、お客さんはグルメサイト経由での来店ではなく、お店のホームページ経由からの来店が増えてきます。

グルメサイトは【駅名 料理名】などを検索意図には威力を発揮します。しかしメディアへの露出頻度が増えてくると、お客さんはお店の情報を入手するために、直接「店名」を検索エンジンで検索するようになります。

お店のホームページを持っていれば、必ず店名検索では1位表示されるので、ホームページからの問い合わせや予約が増えるようになるのです。

認知度上がれば上がるほど、集客にホームページが重要になるのです。

まとめ

良い立地であれば、お客さんに認知してもらいやすく売り上げも上がります。その一方、家賃は高く出て行くお金も大きいのです。

渋谷の一等地にお店をかまえるマクドナルドでさえ採算が取れていないといわれています。

「良い立地 = 儲かる」ではないのです。

家賃の高い良い立地を選ぶより、家賃が割安な路地裏立地に出店して、戦略的な集客で「目的客」を集客して行く方が「安定的な利益の確保」と「継続的なお客さんの確保」につながります。

立地の良し悪しだけで物件を選んでいたという方は、少し考えを変えて、家賃の安い「路地裏物件」に目をつけてみてはいかがでしょうか?